2018年4月11日水曜日

最近読んだ本

最近読んだ本の感想など。

・転生の魔
私立探偵飛鳥井シリーズの新作、まさか続編が出るとは思わなかった。
60年代の左翼運動から、現代の引きこもりやら宗教やらテロやら政治やらあらゆる社会問題をぶち込んで力でつなぎ合わせた、笠井潔がいよいよ小説家人生を総決算に来たと思えるような「よく書いたな~」と感嘆するしかない一作。
事件の黒幕が、作中で言われるほどの大物感が伝わってこなかったのだけ気になりました。ニックネームが良くなかったんじゃないかな(笑)
               



・明智小五郎回顧談
ホームズの架空伝記「ガス燈に浮かぶその生涯」の明智版と思ったが、さまざまな実在非実在の人物を登場させ、かつ乱歩ワールドをファミコンジャンプ並みにつなぎ合わせた力作。

合間に挟まる二十面相パートの出来が本当にすばらしく、子供の時分に読んだ時は、アルセーヌ・ルパンのエピゴーネンにしか思えなかった二十面相の人生を掘り下げたことでだいぶ魅力を増しています。黄金仮面の手下として働いた若造という設定を付けた事で、似た手口を濫用(笑)したことにも説明が付きました
そしてなにより、「若き怪盗二十面相がベテラン探偵明智に挑む」という構図はルパン対ホームズと同じですね。
終盤の展開は、批評家にすぎない探偵の業についても言及されてて唸りました、素晴らしい小説ですが、スパイ戦や政治・軍事のパートがどうも…あまり面白くない上に長いのが玉に瑕。
              


・オリジナルビデオアニメ80's テープがヘッドに絡まる前に
80年代のOVAを一通り網羅した(アダルトアニメやキッズアニメは除外)カタログ本。
10年くらい前に、80年代OVAを必死こいて集めてたのでこう言う本が出てくれて嬉しさのあまり涙が出そう…。

OVAの表層にいる有名作品以外の雑多すぎる群れが取り上げられることって現在ではほぼ無いのでアニメ史的にもすごく有意義な本だと思います。コナミのOVAとかねぇ…
ちょっと驚くのが、トップをねらえ!の紹介文「脚本は岡田斗司夫名義だが、実際には山賀博之が執筆している」と書かれてます。トークショーで喋るのと本に載るのは訳が違うけど、もう大丈夫なんですね。
90年代版もぜひ!!
             


・『ドラゴンマガジン』創刊物語―狼煙を上げた先駆者たち
期待してたが微妙にハズレ。
関係者インタビューと当時の活字雑誌やエンタメ界隈をめぐる状況をデータ中心に読み解く本ですが、著者の論考部分はやたら文章が固く「論文みたいだなぁ…」と思ってたらホントの研究者だった。

ドラゴンマガジンを立ち上げた編集者のインタビューで、
「春樹のとこに企画書持って行ったら『これでいいんじゃない。タイトルはファンタジアで行こう!』とGOが出て、次に歴彦のトコ行ったら『こんなんじゃダメだ!版型はA5、タイトルには必ずドラゴンを入れろ!!』」と、兄弟の間でたらい回される話は最高だったし、「特に、ライトノベルを作ろうと思ってたわけではないけど、自然とジャンル的な約束事が出来て行ってしまう」という言は示唆に富んでいます。
             


・21世紀本格ミステリ映像大全
21世紀に入ってからの「映像の形で発表された本格ミステリ」を紹介するガイド本。
ここ何年かで、「ネットの情報(笑)」のゴミ率が異常なまでに上昇したので、かえってこういう本の需要はすごく高まってると思うし正直助かります。あくまでガイド本なので、各作品においてそこまで突っ込んだ切り口ではないが…

「国内映画、ドラマ、アニメ」「海外映画、ドラマ」の5章に分かれてますが、合間のコラムでも「ミステリ色のあるマイナーホラー映画」「韓国映画どんでん返しの系譜」「貴族探偵脚本家インタビュー」などなかなか読ませます。
もうちょっと海外多めのほうがありがたかったけど。