2015年11月8日日曜日

15周年記念「本格ミステリ作家クラブ講演会」に行ってきました。

11月7日に、早稲田大学戸山キャンパスで行われた、ワセダミステリクラブ主催の「15周年記念 本格ミステリ作家クラブ講演会」に行ってきました。
http://wmc-mw.sakura.ne.jp/kouenkai.html
講演会の面子は、綾辻行人先生・有栖川有栖先生・北村薫先生・辻真先先生・法月綸太郎先生
司会、杉江松恋さんという豪華な顔ぶれ。
しばらくビリビリ酒場にも足を運んでないので、辻さんや法月さんのトークも久々です。

…顔ぶれから想像で来ましたが、開場前に人が集まりすぎてワセダミステリクラブの方々が凄く大変そうなのが印象的でした。のちのちいい思い出に昇華する事を願っております!!



トークショーは、一人ずつがマイクを持って本格ミステリ作家クラブ15年間の思い出話をしていく構成。
以下、記憶とメモを頼りに印象的だった話を拾っていきます…。

綾辻行人
・本格ミステリの尺度を考えたいよね。普通の小説としての評価軸と、本格ミステリとしての評価軸を別に設定して、「本格ミステリ大賞」を作ったらどうか、そのためには組織を…。と言うことになって案内がまわっていったのが最初。

・主に推進していたのは笠井潔さんと二階堂黎人さんで、その二人はもうおられないんですけど(会場笑)初代会長は有栖川さんにということになりました。

・広く集うか、狭くコアに少数精鋭で行くかとなった時、僕は「年会費10万払ってでもやりたい、本当に好きな人だけを集めよう」…と言ったんですが一蹴されまして(会場笑)、バランスよく広く声をかける形になりました。


●有栖川有栖(初代会長)
・笠井さんから電話が掛かってきて「本格ミステリ作家のクラブを作りたい。それは本格ミステリの賞を創設したいからだ」と言われたので即座に「笠井さんは新人賞以外の、既存の作家に与える賞は要らない。と言ってたのにどういうことですか」と聞き返したら返事が一言。
笠井「本格のため」
有栖川「わかりました」(会場笑)


・若い人で「歴史を振り返ると、本格の冬の時代は無かった」と言う人もいるが、確かにおっしゃるとおりで途絶えたことは無かったが、新人としてデビューしたい私たちを出版社が探している気配は全く無かった。
島田さんや笠井さんは仕事あるけど大御所、それこそ「横溝正史を使い切ればいい」と言うのが当時の出版社の考え。


・会長を選ぶ段になって、北村さんが「会長って要りますか?」(会場笑)と言ったら笠井さんが「要ります」って。


・「本格ミステリ作家クラブ」の名称はすんなり決まったが、英語名はどうする?と言うことになって山口雅也さんが英国のディテクションクラブに倣って「ジャパン・ディテクション・クラブ」と言う案を出したら綾辻さんが「略すとJDCになるけどいいのか?」(会場失笑)


・「本格ミステリ」をどう英訳するかと議論になったが、私が「本格はそのままHONKAKUでいいです。ハラキリ、カロウシ、ホンカクと言う具合にウェブスターの辞書に載るくらいになればいいですね!」


●北村薫(二代目会長)
・出版社と話したら「賞と言うのは与えるだけなので、出版社としては本を売る場につながる企画を」と言われ、それは全くその通りなので授賞式の翌日に書店でトークショーをやることにした。作家と出版社と本屋と読者を繋ぐイベント。
第二回を講談社の部屋でやったら、本が飛ぶように売れていくのを見た出版社の若手が涙ぐんで「本が…本が売れている!!!!」これは美しい話だなあと(会場笑)


・毎年ありますのでここに来た方は来年ぜひ(笑)


●辻真先(三代目会長)
・いまごろ聞いてもアレなんですけど、どうして僕が会長になったんですか?(北村「余人をもって代えがたい!」(会場笑))


・松本清張さんは「お化け屋敷」と言ったけど、ぼくはお化け屋敷が大好きなもんですから(笑)


・狭い的でも、とにかく射抜けば読者は付いてくる。


「本格ミステリ大賞 全選評 2001-2010」「ミステリ・オースルターズ」「ミステリ作家の自分でガイド」を出版。
「ミステリ・オールスターズ」は一人30枚とルールを決めたので面白い実験の場になった。
                        


・(杉江)辻さんの任期中に、牧薩次さん(笑)という方が受賞することになって、あの時は辻さんが壇上を行ったり来たりする事に…(会場笑)


●法月綸太郎(四代目会長)
・綾辻さんに「僕は身体が弱くて何かあると大変だから(会長は出来ない)、法月君!」
「わかりました!!」と言って会長になったんですが、その後、綾辻さんは水泳とか始めちゃって僕より健康に…(会場失笑)


・10周年の時に梅田でイベントをやったら、ファンの方だけでなく僕ら作家も、目の前で本が売れていくと言う光景をなかなか見ないもんですから頭がパーッとなっちゃって(笑)中毒性が。
ああ、こういうのはいいなぁと刷り込まれて「15周年がまわってくるから、またああいうアドレナリンが出るようなことが出来ないかな」と思って(笑)


・この並びだと僕が一番年下なので、ずっと若いつもりでいたけど、僕が引き受けたときよりも有栖川さんがやったときの方がはるかに若い!15年前ですから。
気づかないうちに自分が歳を取っていると言うことを痛感(会場笑)して、これはいかがなものかと(笑)

・HPリニューアルしたので見てね!
http://honkaku.com/


・「十角館の殺人」英訳について。
(綾辻)島田さんのアメリカ人の友人から話が来て、彼の出版社から出た。
規模は小さい出版社ながらも話題になってワシントンポストに書評が載りました。
「HONKAKUとは何だ?」と言う反応になり、島田さんが序文を書かれたので、まあ島田史観に従った(会場笑)内容ながらも、おおむね押さえた内容に。海外にもパズラーマニアがいるようです。



●締め
(法月)本格ミステリ作家クラブでは、毎年短編のアンソロジーを出しています。
「今の本格ってどうなっているのかな~…。と思っている読者の方はこれを一読されるのが一番早道だと思います!」
                                                   

●サイン会
サイン会からは皆川博子さん、麻耶雄嵩さんも参加で、どこのレーンも大行列。
 めったに無い機会なので、麻耶さんのサインを貰いました!
サインと一緒に判子を押してくれるはずが、赤い紙(隻眼の少女)だったので「こ、これは見えない…!」と一瞬微妙な空気が流れる事態に(笑)
止む無く別のページに押してもらいました。ありがたや。
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(感想)
法月さんは「こんなに集まるとは思わなかった」と言ってたし、主催の学生さんも開場前の混雑をみて「まさか…?!」と言う反応でしたが、どう考えてもこの顔ぶれだったら体育館とかホールは軽く埋まりますよね。

教室のキャパシティはロフトプラスワンの倍近くあったものの、「ここまでです」と多数の来場者が打ち切られる場面を見てしまい気の毒になりました(仕方ないけど)
学生さんは立派にやったと思います。
並んでいる最中に、ワセダミステリクラブで発行している同人誌を進められたので入場料代わりにと購入。
「『夏と冬の奏鳴曲』論」や、「容疑者X論争再点検」「ソウルクレイドル論」とか、なかなか面白かったのでコミケとかで見かけたら買うかも。